航空機の金融、査定制度、航空保険に関して思うこと
日本の銀行は航空機に対してお金をなかなか貸してくれません。現在は当然だと私も思います。「どれくらいの担保価値があるのか」「数年後いくらの値段で売れるのか」「整備や維持管理によって価値も変わる航空機をどのように査定したらいいのか」「その航空機を飛ばすパイロットはどのような資格を持ち、どのような経験があるのか」、車よりも安全と言われる中で、安全を守る、資産を守るための要素が航空機の保険でしか担保出来ないのが現状であるから、所有する企業または個人の資産状況及び利益の将来予測のみしか融資の判断基準に利用出来ないからです。
今の日本の現状で、私が銀行家ならば航空機にお金を貸すことはリスクであり、積極的には出来ないと思います。または利息を高く設定するしかないのは金融機関として当然です。
航空機の金融改革をするためには、「航空機の査定の基準」を国を挙げて、世界市場の基準にあった実用的なものを作成しなければなりません。また出口戦略として世界の航空機売買市場との連携も必要になります。
航空機に融資する場合、不動産で融資するときのようにその航空機と保険を担保にとることは当然のことでありますが、事故というのは、ヒューマンファクターが多く関わっています。それは、パイロットの資格であったり、経験であったり、整備や管理の原因であったり様々に及びます。
ビジネスジェットの世界で言えば、アメリカにはフライトセーフティーという、大変素晴らしいプログラムが短期で組まれたパイロットのためのシュミュレーター訓練施設、整備士やキャビンアテンダントの訓練学校が全米に、航空機の機種ごとに振り分けられ、定期的に訓練を受けて安全を守るプログラムを航空機を所有する企業の運航者に提供しています。
ではなぜ、定期的に運航コストを出来るだけ下げたい企業が高い訓練費を出すのでしょうか。答えは簡単です。航空機の保険がパイロットが定期的な訓練を受けると、保険料がそれ以上に安くなるからです。事故を起こす原因の一番のファクターを少しでも軽減することにより、事故の確率が少なくなると、連邦航空局も認めた訓練所であるからです。保険会社も事故がないなら、保険料は全部利益につながるので大歓迎であるということでしょう。 日本の金融機関と保険会社、国土交通省も関与した上で、そのような仕組みづくりを作っていったら日本のビジネスジェットも増えると感じます。
機長・操縦教官
野口 武彦